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フジの人工尾びれプロジェクト

<Chapter 6 いよいよ完成フォルムへ、そしてフィナーレ>

☆2006年4月
 ブリヂストンのカウリングタイプの人工尾びれの成功、そして僕が再び挑戦した改良版シェルタイプ0号の人工尾びれも成功した。それから更に1年の月日が過ぎようとしていた頃、プロジェクトにとってついにゴールを迎えるときがやって来た。それは当初から夢見ていたシェルタイプ・カウリングタイプ人工尾びれの融合だった。
 一つ目はブリヂストンの技術力、尾びれのフォルムはフジの家系をイメージした僕のデザインで作り上げた、ブリヂストンメイドのシェルタイプ人工尾びれ1〜3号が完成したこと。

この尾びれはブリヂストンエンジニアリングの全面協力により、ポリカ部分からすべて作られた。中でもゴム部分は中心素材にベルトコンベアの基盤に使われている耐久性バツグンの心材に、ブリヂストンが持つ760種のゴム素材の中から最適なものを選び、特別に作りあげられた。これ以上は望めないほど、素晴らしい出来だった。
もちろん、この人工尾びれをはくフジはご機嫌、その上美しい!
二つ目は、カウリングタイプのリニューアル。今までデザインのベースとなっていたフジと血縁関係にないイルカ、トクの尾びれの形をやめ、僕がシェルタイプで訴えてきたフジの家系の尾びれをイメージした形に変更。素材もシェルタイプ1〜3号同様、心材にゴム部分とブリヂストン最高のゴム技術を用いたものとなった。その上、カーボン部分もブリヂストンサイクルの持つ最高技術のもとへとバーションアップした。つまり、考えうる最高のカウリングタイプ人工尾びれへと生まれ変わったわけだ。
これが僕が夢見ていた‘フィナーレ’だった。
この新生カウリングタイプ人工尾びれは、ブリヂストンのチームリーダーである加藤さんにより<カウリングタイプ・ワイベック>と名づけられた。ワイベックの名前の意味を教えてもらったときは正直泣けてきた。加藤さん、本当にありがとうございます!

ワイベック=YBECC
Y:薬師寺、B=ブリヂストン、E:ブリヂストンエンジニアリング、C:ブリヂストンサイクル、C:美ら海水族館の頭文字からつけられた。
2006年5月、このワイベックをはくフジの姿は美しく輝いおり、一緒に戦ってきたチームの仲間と喜びを分かちあった。

このとき僕は、ある女性からかけられた言葉を思い出していた。
『フジのプロジェクトの中に機能だけでなく、美しいカタチにこだわる人がいてくれて本当に良かった。』
その女性は足が不自由で、自分の足にあわせて特注の靴を作ったのだが、出来上がってきた靴は彼女の期待を裏切るもので、機能ばかりで美しいものとは言えず、悔しくて一晩中泣きくれたことがあったと僕に話してくれた。ちょうどその時の僕は、大企業であるブリヂストンや大組織の美ら海水族館に対し、たった一人で生意気なことを言い、自分ひとりが空回りしているという孤独感に押しつぶされそうになっていた時だった。その女性が言ってくれた「人工尾びれを美しいものにしてくれて、ありがとう。」という言葉が、まるでフジからの言葉のように思えて、もう一度がんばろうと思えたのだ。
 そして今、僕達が追い求めていた理想の人工尾びれをはき、元気に泳ぐフジの姿が目の前にあった。

これが僕が関わり、僕から見た「人工尾びれプレジェクト」のストーリーです。
フジのために始めたはずが、いつしか多くの宝物をフジからもらっていた。
共に戦ってきた、加藤さん斉藤さんを始めとするブリヂストンのチームの方々、美ら海水族館の内田館長を筆頭に獣医の植田君、トレーナーの古網君を始めとする海獣課のみんな、それを応援する水族館のスタッフ、そして何よりもフジに出会えたことを心から感謝しています。彫刻家として、1人の人間として、多くのことを学び多くのことを得た経験でした。「本当にありがとう!!」

P.S.
 2008年3月、獣医の植田君と大阪で再会。フジはすこぶる元気という報告を受けた。よかった。
今年でプロジェクトが動き出してから5年がたつ。またチームのみんなで沖縄で再会しようと約束を交わした。

こうしている今もフジは沖縄の青い空の下、元気に泳いでくれている。また会える日が楽しみだ!

●プロローグ  
● Chapter 1
フジとの出会い
● Chapter 2
HARAKARA Madeのポリカの人工尾びれが誕生
● Chapter 3
ブリヂストンとのシェルタイプ人工尾びれプロジェクト開始
● Chapter 4
The チーム
● Chapter 5
新たな挑戦
● Chapter 6 いよいよ完成フォルムへ、そしてフィナーレ
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