☆ 2004年9月22日〜28日
沖縄へ再びやってきた。これで何度目になるだろう。
今回の一番の目的はシェルタイプの人工尾びれを造形の面から最高を目指すということ。
ゴムの尾びれは、フジとは血縁関係はないイルカの尾びれをコンピューター解析し作ったもの。ポリカの尾びれにいたっては、フジの子供のコニーの尾びれを参考しただけにとどまっており、まだまだ完全とは言えなかった。フジの子供のコニー、チャオ、リュウの三頭の尾びれを徹底的に観察し、尾びれがあるころの昔のフジの写 真や、獣医の植田君やトレーナーの古網君の意見も参考にして、失われた尾びれの形状の再現に挑戦した。
また、ブリヂストンのゴムの尾びれのニューバージョンのテストも行われるので、それにも立ち会いたかった。以前のゴムの尾びれは、中芯がフジの泳ぐ力に負け壊れてしまったため、その弱点を克服した中芯でテストに臨んでいた。
しかし、この時に思っても見なかったアクシデントが起こってしまった!
フジが新たにブリヂストンのゴムの尾びれをつけて泳ぎ始めて約10分、泳ぐ力に負けてまたもやゴムの尾びれが壊れてしまったのだ。カーボンの中芯や、カウルと呼ばれるカーボン製の尾びれを固定するカバーがともに破損してしまった。それは当初のころには想像もしなかった、フジがジャンプで尾びれを強く振った瞬間に起こった。カウルが二つに割れ、固定部分を失ったフジの尾びれは、まるで靴が脱げるかのように飛び出し、壊れたカウルの破片と接触したため、尾びれを傷けてしまった。
壊れたカウルの破片と、プールの底へ落ちていく人工尾びれを真っ先に拾いに行ったのは僕と、ビデオカメラを回していた獣医の植田君だった。水中にはブリヂストンの加藤さん、斉藤さんもいて、みんなが心を痛めた瞬間でもあった。
幸い、フジの怪我はたいした傷ではなかったが、みんなの思いは複雑だった。ただでさえ、病気で小さくなったフジの尾びれにこれ以上傷をつけたくないという思いは、みんな同じ。
その現場を直接見た僕は、シェルタイプの必要性を改めて痛感していた。
機動隊が盾として用いる対衝撃素材である、ポリカーボネイトで尾びれをホールドすれば、ゴムの中のカーボンが壊れても、今回のようなアクシデントには起きなかったはずだ。
加藤さんや斉藤さんも想像以上のフジの泳ぎの上達に、ここまで力がかかるとは予想できなかった。
つらい思いをしていることは、同じ思いでこのプロジェクトに関わっている僕には痛いほど分かった。
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| 人工尾びれをつけてないフジ |
この後、壊れないカウルを目指し更なる改良を目指すことが、ブリヂストンで決定した。ブリヂストンのスタッフが帰った後も、僕はシェルタイプ尾びれの原型作りのために夜遅くまで作業に没頭した。
そして、その原型をもってフジのプールサイドに行ったときのことだった。怪我をしたにもかかわらず、フジは僕が手にするシェルタイプ尾びれの原型を見て、「早くそれをつけて〜」と言わんばかりに尾びれを水面 に持ち上げてきたのだった。心底ほっとした。
僕らがフジのためにやったことでも、フジが心からやってもらいたいことなのか、ずっと考えさせれていた。「フジ、これはまだつけてやれないけど、待っててよ。きっといいシェルタイプ人工尾びれを作ってもってくるからね。」と、思わずフジに叫んでいた。
この後も、まだまだひと波乱あるとはこのときは思ってもみなかったのだが・・・。
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| ブリヂストンのゴムの尾びれ。2004年12月にカーボンファイバーからグラスファイバーの心材に変更することにより、ようやく成功したが、これまでフジの力に負けて中芯が破損していた。 |
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