☆ 2003年10月
尾びれ病に感染してから約2ヵ月後、恋焦がれたフジにやっと会えた。現在、ブリヂストンチームのゴムの尾びれも改良に改良を重ね、素晴らしいものになっている。そんな今だから言えることだが、この時初めて見た人工尾びれは、まだまだ未完成で、陸上のトップスプリンターにゴムの長靴をはかせて100m走をさせているようなものだった。
このゴムの尾びれを目の当たりにしたこともそうだが、ブリヂストンとの尾びれ協力とともに、僕から提案する全く別 の人工尾びれを創りたいという思いが、ふつふつとあふれ出してしまった。
イルカ好き、彫刻家、そして手先の器用さを持つ僕としては、やらずにはいられなくなってしまったのだ。獣医の植田氏、そして美ら海水族館の内田館長に頼み込んで、もう一つのHARAKARA madeの人工尾びれの創作が始まったのだ。素材はゴムとは全く別の切り口から、耐衝撃素材のポリカーボネイトでいこうと決めていた。その理由は、耐久性に優れ、しなやかさも持ち合わせている素材だから。プールという限られた空間で、もし割れるようなことがあれば、すぐにその破片を口にしてしまうイルカの特性やイルカのキックの力強さを泳ぎとしてうまく伝えるには、この素材しかないと思った。
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| 小さくなったフジの尾びれ |
そして、加工にあたり一番注意したのが、フジの小さくなった尾びれをホールドする部分。この部分はとても繊細な加工が必要で、しっかりとホールドしてその力を無駄 なく伝えると同時に、フジの尾びれに負担がかかりすぎないようにしなければいけない。
この加工にあたり、2002年11月に美ら海水族館とブリヂストンからの以来で、フジの残された尾びれの原型模型を作りにいったことが、とても役立った。
このとき何度もフジの小さくなった尾びれに触れ、フジの尾びれの個性がはじめて分かったような気がした。またフジの子供たちを観察し、フジの家系が持つ尾びれ独特のカーブは、小さくなったとはいえ健在であること。キールと呼ばれる尾の付け根の動きによって、小さくなった尾の形もかなり変化する事など、多くのことを教わった。そこから中に入れるクッション剤の厚みを考慮したうえ、ミリ単位 の加工が出来た。
クッション材選びは、フジの気持ちを少しでも理解するためにプールでモノフィンの中に入れて泳いだ。我ながらここまでするかというほどの入れ込み、らぶフジである。
そしてようやくポリカーボネイトの人工尾びれの外形の加工作業。このとき、もっとも大切にしたのは、フジの子供の尾びれをもとに、失われた尾びれを出来る限り再現すること。この体験は、彫刻家として素晴らしい財産となった。イルカの尾びれが一頭一頭これほどまでに表情が違うことが、おかげで理解する事が出来た思い。サンキューフジである。
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| 人工尾びれを装着 |
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| 人工尾びれをつけたフジ |
こうして、汗と涙の努力の末にようやく完成したポリカーボネイトの人工尾びれ。フジがこれを装着して泳いでくれたときは、本当にうれしい瞬間だった。おおつ〜!!!と小さくガッツポーズをした。
面白い事に、ポリカーボネイトの尾びれは海中に入るとかなり透明となるので、なかなか美しく見えるというおまけもついた。
ポリカボーネイトの尾びれは耐久性に優れ、泳ぎながらにしてフジの小さくなった尾の形が見る人にも分かる。時間があれば、VTRでフジの泳ぎを見ては、更なる改良方法を発見している。
←2004年3月の写真 |